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~レスター・ヤングとベイシーの1936-1940集大成CD必聴のオススメ

数年前、ジャズのレアな音源を集大成してレコードやCDとしてボックスもので販売しているMosaic(モザイク)Recordsからレスター・ヤングの最初期の音源をリリースされたのを知りました。

タイトルは「Classic Columbia,Okeh and Vocalion Lester Young with Count Basie」というものでしたが、発売当初なぜかボクは内容をよく見もしないで「どうせまたただの集大成ものだろう」と高を括ってしまい、つい通り過ぎてしまっていました。ところが、最近になってあるジャズファンの知り合いから驚愕の事実を告げられ、このセットを探していたのですが、Mosaicというセットものは見つけたときが買うときで、その機会を逃すとオークションでもなかなか出品されない、という曰く付きのシロモノ。まったく入手できず困っていましたが、先ごろやっとe-Bayでこれを見つけて何とか落札することができました。でも、ブックレットは付いていませんでした(出品時に事前にSellerはこのことを謳っていましたので納得ずくです)。

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レスター・ヤング(ts /cl:1909-1959)はボクにジャズの素晴らしさを教えた大恩人であるばかりか、これまで何度となく書いてきたとおり、今現在までも彼の音楽性に惚れ込んでその演奏に親しんできた自分の中では最重要のジャズ演奏家です。先日、リー・コニッツに会いに行った話を書きましたが、彼もまたレスターの音楽性に惚れ込んで演奏を続けてきた人、といっても間違ってはいないと思います。また彼が若くしてその門下生となったレニー・トリスターノもレッスンの中でレスターのソロを全員で合唱させた、なんていう話も残っているほどですし、リーにしても、ウォーン・マーシュにしてもそのアルバムの中にレスターのこの時代のベイシー楽団やコンボのソロを引用しているのは周知の事実です。

近年になってもYouTubeでアップされているように未だにリー・コニッツはレスターのこの当時のソロを耳コピーしているほど。もっと言うとソニー・ロリンズなども近年は彼のルーツであるレスターの演奏スタイルに戻ってきている、と強く感じます。

楽器を演奏される方に申し上げたいこと、それはもしこの時代のレスター・ヤングを含むカウント・ベイシー楽団の演奏に興味を持つことができて、その演奏を繰り返し何度も注意深く聴くことでやっと見えてくる、わかってくること…それはきっと一生の宝物になるし、セッションでもきっと役に立つことだ、と確信しています。明快でいて、やる分には実際はこんなに難しいことはない、そういったことを数多く発見できます。たとえば、レスターがソロをとっているときのベイシーの左手の動き、ジョー・ジョーンズのアクセントのつけ方など。

レスターの音はエッジがなく漂うようでいて、実は凄く尖っている(Brilliant)のです。またどんなにタイムコントロールしても全くブレないのです。そしてそれはファーストテンポであろうが、バラードであろうが変わらない。こういったプレイはコンボも素晴らしいのですが、特にベイシー楽団のように堅実無比のリズムセクションや、タイトなリフ・アンサンブルの中でのスイング効果は比類のないものといえるように思います。あなたがもしレスターの音楽をお聴きになって、なぜこんなにスイングしているのか不思議に思われたら、一度ボクが上で言ったことを少し考慮しながら聴いてごらんになるといいと思います。くどいようですが、この際敢えて言うと、音をだすことよりも先にこういった先例を注意深く聴いて自分の血や肉とすることこそ大切なことに思えるのですが、皆さんはどう思われるでしょうか?

トッププレイヤーの多くの人々(枚挙にいとまがないので省きますが)には共通項がある、と思います。そしてその秘密がこれらの演奏に集約されている、といっても過言でないと思うのです。言い過ぎかな?

今回の集大成の基軸はレスターがDeccaと契約したベイシーとともにカンザスシティからニューヨークに赴く過程でシカゴでVocalionに初録音した、1936年11月9日の有名なJones-Smith Incorporatedという名義でのレコーディングから、Decca時代を経て正式にColumbiaと契約し直した1939年2月13日からのKansas City Sevenとカウント・ベイシー楽団での録音や一部Glenn Hardman and his Hammond Fiveでの録音に的を絞ってあります。すなわち、DeccaやCommodoreなどへの全録音とビリー・ホリデイやテディ・ウィルソンらとの録音を除く、1940年11月19日の録音を最後にレスターが楽団を去るまでのスタジオ録音の全トラックを網羅したCD4枚組、という内容です。

上記、気を持たせる書き方をした「驚愕の事実」というのは、これまでどこにも発表されていなかった別テイクやBD(失敗)テイクなど11トラックもの演奏が新発見され、このCDボックスに収まっていたのです。

ところで、なぜ「驚愕の…」という大げさな(実は決して大げさでないのですが)表現をしたかというと、これらの11トラックが録音されたのが1939年11月6日、それに7日の録音分であり、この時代のレスターのプレイ自体が彼の全人生の中でも際立って創造的で高品位な演奏をしていた時代の真っただ中で、しかも前期ベイシー楽団としても絶頂期にあたる時代のものだということと、ここ数十年間、ラジオ音源を別として、この時代のレスターのソロが聴けるベイシー楽団のスタジオ録音の音源というのは全くといっていいほど発見されていなかったからです。
今回新発見されたトラックは以下の通りです。

DISKⅡ
⑯I Left My Baby(ALT TK-2AND BD-6)4:09
⑰Riff Interlude(AKT TK-1)3:11
⑱Riff Interlude(ALT TK-2)3:07
⑲Riff Interlude(BD-3)1:33
⑳Riff Interlude(ALT TK-4)3:03

DISKⅢ
⑪Between The Devil And The Deep Blue Sea(BD-1AND BD-2)2:40
⑫Between The Devil And The Deep Blue Sea(ALT TK-3)2:39
⑬Between The Devil And The Deep Blue Sea(ALT TK-4)2:32
⑭Ham ’N’ Eggs(BD-5)1:35
⑮Ham ’N’ Eggs(ALT TK-6)2:27
⑯Hollywood Jump (ALT TK-1) 2:35

DISKⅡ⑯Jimmy Rushing(VCL)の歌の前に本テイク⑩に見られないセカンドリフが現われ、3分半超えとなり別テイクとした可能性があります。
⑰-⑳Lester Youngのソロに関しては先発Buddy Tate(TS)、Harry Edison(TP)と比較してトラックごとに全く違ったアプローチを行っています。また、ソロの途中で演奏を止められた⑲では少し反抗的な態度がみられるようです。

DISKⅢ⑪-⑬Count Basieによるイントロ部分、また全体のテンポの変更がみられます。
⑭-⑮も前述DISKⅡ⑰-⑳と同様にテナー・バトル曲でLesterのアプローチが興味深いです。特に⑮ソロパートでLesterはベイシー楽団での第一期最後の録音となったBroadway(TK1)などにもみられるように、自在なタイムコントロールを試みています。⑯でもLesterのソロ出だしが特徴的です。

BDテイクとなったものの多くには演奏ストップのあとJohn Hammond氏の細部に亘るコメントがみられることから、Decca時代とうって変って彼はスタジオに入り大幅に監修を行っていたようです。彼のコメントに対する一瞬シラケたような空気や、別テイクの演奏などに若干、「また止められるのかな」という様子見の姿勢が見られること、またレスターの反抗的な態度などから察すると、楽団員の多く(もちろんLesterも含め)はJohn Hammond氏のプロデュース力に感謝しフォローする一方で、彼の指導のもとで楽団のカラーがこの時期急速に変化を遂げ、カンサス・スタイル本来の特徴である野性味が薄らぐことなどに少なからず抵抗感もあったのでは、とボクもまた感じます。


なんとブックレット付きでオークションに出品されてるようです。悔しいなァ(;一_一)
by kazuo3455 | 2013-05-28 00:33 | ジャズとの出会い

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